私が大学在学中、実家を離れているときです。
中学生の時に私が拾ってきた白い小悪魔(もう『小悪魔』ではなくなっていましたが) が、風邪をこじらせ、肺に水が溜まり死んでしまいました。
とても人間好きで感情表現の豊かな猫だったので、
母も私もかなりショックでした。

ランが庭で鎖をはずされて自由にさせてもらっていると、
猫はおもしろいようにランにちょっかいを出しました。
ふるふる尻をふりながら狙いを定めて、
はしゃぎまわるランの前に立ちはだかるようにジャンプしてくるのです。
ランも軽く相手になってやります。
冬に雪が積もるとランはとても喜びます。
雪が降ったらコタツで丸くなるはずの猫が
脚の裏を真っ赤にしながら犬と一緒にはしゃいでいました。


 


猫の存在はランにとって、目の上のたんこぶから
やんちゃで生意気な弟くらいな位置付けになっていたのかもしれません。
猫が家に入りたがって窓の前で待っていると、
ランは猫が中に入りたがっていることを控えめな吠え方で
家の中の人間に知らせました。

 

母はバスタオルにくるんだ猫の亡骸をランのところへ持っていきました。
「ニャオが死んじゃったんだよ。」

猫の亡骸を確かめ、母を見上げるランの目はとても悲しそうだったと聞きました。
猫の死を悲しんでいたのか、それとも、悲しみに泣きぶせぶ母をいたわっていたのか。
自分に対する愛情が云々ではなく、ランも悲しみに心を傷めることを知りました。



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