2003年8月

毎日の日課



朝6時見習い生のエイヴァは起床、私の上の階で寝ていた彼女が支度する音が聞こえます。
外のドアが開き、彼女が鶏小屋の扉を開けると、ニワトリ達が霧の深い庭に散らばって行きます。
餌を鶏の餌入れに入れ、それから放牧されている馬をバーン(家畜小屋兼納屋)に入れ、その日に馬を使用する予定であれば、オーツ(燕麦)やバーレイ(大麦)の混ざった穀物のミックスの餌をあげます。夏の間は馬は放牧地の草で飼育され、力仕事を任される日だけカロリー豊富な穀物を与えられるのです。

母屋と庭に散らばっていく鶏たち。母屋は20年ほど前にここの主人が中心になって建てたもの。(親戚などが手伝いに来ている建築当時の写真が家の中にありました。)大工の技術はご主人の父上から伝授されたもので、家畜小屋兼、干草を貯蔵してある大きなバーンはご主人が父上と建てたもの。
こちらには大工さんでもないのに、自分で家を建ててしまう、とても頼もしい人がたくさんいます。
ヨーロッパから少量の家財を携えて未開の土地に渡ってきた、パイオニア時代の名残なのでしょうか。

農家の敷地は縦長で、母屋から坂を下って野菜畑にたどり着くまで、両脇は放牧用の牧草地になっていました。口笛に呼ばれて、傾斜した牧草地を馬たちが上ってくるのでした。
ワークホースが働く日は、馬たちにハーネス(轢き馬具)をつけて準備しておきます。ハーネスを馬に付けて行くエイヴァ、私もお願いして手伝わせてもらいました。(これぞ、喉から手が出るほどやってみたかった作業でした。)ハーネスを運ぶだけでもヨロヨロした足取り。最初は低い身長のためほとんど不可能なのではないかと思われた大型馬への馬具のセッティング。私の頭はやっと馬の背中に届く程度です。それでも数度繰り返したらなんとかちゃんと付けられるようになりました。チビで非力な私でもコツさえわかればなんとかこなせるものなのです。どこで仕事をしても短い手足で頼りなさそうに動く私はいつも劣等感を感じずにいられません。手足が長ければもっと力が入るのに!!(腕が回らなければ入れられる力に制限がでてくるんです、これが。)短足ちゃんが日本での生活で味わうのは容姿的なコンプレックスだけでしたが、こちらではそれだけでは済みませんでした。カルチャーショック。白人は手足が長いだけあって基本的に力持ちです。ちなみにエイヴァは白人にしては小柄な方でしたので、本当に背の高い方とくらべると、驚くほど力持ちではありませんでした。

バーンに入って朝食を食べるワークホース