2003年8月

スカンク



カナダといえば大自然と野生動物。
というのが私のイメージですが。田舎で農業を営む人々にとって野性動物はペスト(有害生物)であります。
日本では今年は熊の被害が大発生してました。捕らえられていたうちの多数がまるでぬいぐるみのような可愛い子熊たちでした。可愛らしい野生動物が有害生物として悲しい結末を迎える話に「小鹿物語」というのがありましたね。ある少年が、孤児になってしまった可愛いバンビちゃんを家に連れて帰って飼いならしますが、成長したバンビちゃんはどう対策を施しても、柵を飛び越えて畑の作物を食い荒らしてしまいます。最後は銃殺されてしまうんですよね。まったくの助走もなしに1.5メートルほどの柵を軽々と飛び越える鹿の姿をよく見かけます。
話がそれましたが、日本ではあまりなじみのない一見愛らしい野生動物が、こっちでは人々の目の敵にされていることをカナダの旅を通して知りました。
そのひとつとしてスカンクについてお話します。
悪臭のガスを凶器に持つとは、それほど愛らしくもないかもしれません。
しかし、日本人が初めて出会うスカンク像とは、ディズニー映画に登場するスカンク「フラワー」ちゃんなのではないでしょうか。映画の「バンビ」を見た経験がなくとも、睫の長いブルーのお目目ぱっちりの「フラワー」ちゃんのイメージ、またはフラワーちゃんマガイのスカンクを目撃した経験はあるはずです。「フラワー」ちゃんからはスカンクの放つ悪臭の「あ」の字すら想像させません。なにしろ名前が消臭効果バリバリの「フラワー」です。ディズニーは子供相手に皮肉りたかったのでしょうか?
とりあえず、想像するに、日本に輸入された最初のスカンク像はフラワーちゃんだと思われます。ディズニーに執着した私にとっては、スカンクといえば、あのお花畑で恥ずかしそうに目を瞬かすく「フラワー」ちゃん以外頭に浮かびませんでした。(フラワーちゃんは実は恥ずかしがりやのオス!♂!何十年も女の子と信じてきた私には非常にショックでした)
そんな私がカナダで初めて「スカンク」の名前を耳にしたのはサスカチュワン州の農家でした。
その農家の方はいかにスカンクが質の悪い動物であるかを熱心に語ってくれました。
その方の経験では、
「あるとき、狂犬病にかかっていると思われるスカンクがもう一匹のスカンクと壮絶に争って、狂っている方が勝利を収めた。相手に噛み付き暴れまわる姿が奴らの凶暴性を表していた。仕舞いには勝利した方は負けたほうを食ってしまった。」
本によるとスカンクは分類で{flesh eater :Carnivora}(食肉目)に属していました。フラワーちゃんはなんと肉食だったのですね!
またその方がおっしゃることには、
「やつらの除去方は箱式の罠を利用するが、罠にかかったスカンクをその場では射殺できない。
射殺するときに例のガスを撒き散らすとたいへんだから、罠の扉を開けて、逃げていくスカンクを背後から射殺する。」
彼らの話によればスカンクの悪臭は何に似ているとも例えられない、強烈な悪臭だといいます。
その後のカナダ東部での旅で私は道路で車に轢かれたスカンクの死骸をよく見かけました。実際死骸が近づくとスカンクが先に死んでいるということが臭いでわかりました。鼻は利くほうですが、それほど酷い臭いとも感じませんでした。それよりもノバスコシア州で通った養豚場付近の悪臭の方がよほど過激でありました。
オンタリオ州(五大湖に接する州)の農家に滞在していたときは、その家に遊びに来ていた家族の連れていた犬がスカンクの最後っ屁をまともに食らってしまった話を聞きました。しかも2度も。相当アホな犬であると笑いものにされていました。
このスカンクの悪臭がこびりついた犬を何で洗うかご存知ですか?
なんとトマトジュースで洗うのだそうです。これは北米では常識。おもしろいですね。