2003年6月

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6月7日
フーラ、スタリオンに襲われる。

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ジュディは遥かマニトバ州から(2つ東向こうの州)からスタリオン(種馬)をレンタルしていました。ジュディーが持っている馬達は基本的にアイスランディックホースの牝馬です。
借りてきたというスタリオンはディガーといい、とてもよく調教されている馬でした。牝馬に蹴られてできた傷を癒すためにジュディが毎日施す処置の間もいつもおとなしくじっとして、正直言って一番調教されているその牡馬が私には一番親しみやすく思えました。
アイスランディックホースは以前にも説明したとおりタテガミがとても分厚いため、タテガミの伸びた子の目はすっかりかくれ、とてもおっとりした雰囲気をかもし出しています。スタリオンのディガーは群を抜いて『ぬぼっ』としていて、攻撃性とは程遠く感じられました。


すぐ人によってくるディガーは人懐っこいともいえる。


子馬が生まれて、5日後、ジュディーは今まで他の馬から隔離していたインギとフーラを皆と同じ牧草地に移すことにしました。スタリオンが来る以前に既に生まれていた牡の子馬がおり、その子とスタリオンを一緒にしたときは何のトラブルも起きなかったために、ジュディーは何の疑いも持たなかったのでしょう。種馬といえば、たいていの場合他の馬とは隔離された囲いの中で飼育されていると思っていました。別の牧場で、いつもは隔離された囲いの中であばれまくっているスタリオンが囲いの柵をぶち破るところも目にしました。そのため私は「え!子馬と一緒にするの??」と最初は驚いたのです。それでも私は素人ですので、ただ、子馬の牧草地デビューをドキドキしながら見守るだけでした。
最初に牧草地Aに母子を入れて、その後、他の牧草地Bから母子のいる牧草地Aにつながるゲートを開き、他の馬たちが入ってくるのを促しました。
ディガーは一番最後に入ってきました。そして立ち止まり、分厚い前髪に隠れたその視線がフーラを捕らえました。