11月6日

亭主関白の50年

 

私の母はホームヘルパーをしている。
お年寄りのウチに行って掃除をしたり、御飯を作ったり、
他にもいろいろな要求に応じた仕事をしているらしい。
毎日日替わりで違った老人のお家にいっている。
その中に夫婦2人暮しの家がある。
爺様はもと大工の頭領。はきはきしていて男らしい。
奥さんはこじんまりとした、昔はさぞかし可愛かったろう女性らしい。
問題は爺様の奥さんに対する態度で、なんでも怒ったように命令するそうなのだ。
ヘルパーのみんながそんな爺様を責めるのだが、
爺様の指示がなければおばあさんは何もできないらしい。
自主性がまったくなくてロボットみたいだそうだ。
強烈な亭主関白の夫婦生活を50年も続けてきたのだ、
今さら、おとなしいおばあさんが器用に自立するのは無理だろう。
ところが先日、下の始末も自分でできないその爺様が
怒って、おばあさんにゲンコツを食らわせたらしい。


 

 

お婆さんはついにぶちきれて「離婚してやる〜!!」と
ちょっとの間家出までしたらしいが、
前述したようなお婆さんだから、ウチに戻るしかなく、
相変わらずロボットおばあさんはうつろな目で
爺様の指示のとおり動いているらしい。

となんだか暗い話なのだが、
そんな爺様、他人に対してはとてもきちんとしていて、
ヘルパーのヒトにもとても気をつかってくれるらしい。
病院でも、「お願いしマ〜〜ス。」と爽やかイイ子ちゃん。
お世話になったら「ありがとうございました〜〜。」と爽やかイイ子ちゃん。
(語尾をのばすのが特徴らしい)
男のヒトって見栄はりなんだよね。
そこがかわいいんだけどね。