9月30日

長い時間

 

実家で飼っていた犬が18年間の生涯を閉じた。

からっぽの犬小屋を眺めていたら、
犬小屋ができたばかりの頃、この犬小屋に入ったことがあっことを思い出した。
体をくの字に曲げて入口からお尻を入れるみたいな格好で。
そうやって座っても、小学五年生の私のお尻は今よりずっと小さくて、
隙間からランが嬉しそうに犬小屋を出入りしていた。
自分の家に侵入されているのに、
ランは新居に遊びに来ているお客さんみたいにおもっていたのかしら。

犬小屋に入るなんて、自分もずいぶん幼かった。
今はそんなこと思いつきもしないだろう。
それくらい自分は年をとった。
こんなに私が年をとるまで、ランは一緒にいたんだと感じた。

家にきたばかりの頃からいろいろな年のランの写真を見ると
されぞれ、まるで別の犬のように見える。
ランが家に来た年に生まれた赤ちゃんは、ランドセルしょったり、自転車に乗れるようになったり、親と口をきかなくなったり、彼氏や彼女をつくったりしながら、車まで運転できるようになっている。
赤ちゃんと車を運転する大人はもう別人みたいだもの、犬の顔が変わるのも当然のことだ。

 


野良だったランの生まれた月ははっきりわからないけど、
2月に家に来たときの成長具合からして、生まれたのは10〜11月くらいだったのだろう。
そうなると、あともうちょっとで、ランの人生は19年目に入るところだったのだ。
自分が生まれた時期に死ぬのはなんだか自然なことに思えた。
そうなると私は真冬の凍てつく寒さの中で死ぬのだろうか。
いやだなと思った。

 

 

 

ランの死でしばらく腑抜けになっていました。
wonderful「ウチの犬のこと」ランちゃんサヨナラです。