6月5日

カラス


仕事中に職場がざわめきたった。

「カラスが電柱にひっかかっている。 」

職場の窓から見える電柱に巡らされている電線に脚を絡めて逆さ吊りになっていた。
翼を羽ばたかせて逃れようとしても、ワイヤーの間に挟まれている脚がどうにも
抜けないらしい。
周りには兄弟なのか、仲間が2羽、近くのビルの屋上や電柱を
頻繁に行き来しながら、自分たちではどうにもできないことに
戸惑うように飛び回っている。
彼等と同じように私にもどうすることもできない。
何度も何度も羽ばたく。
だんだん力つきて来て逆さ吊りになる時間が長くなってきた。
会社の人が電話してくれて、ようやく東京電力の人がやってきた。
ひっかかっているカラスをはずそうとする東京電力の人の周りを
怒っているようになきながら飛び回る仲間のカラス。

ワイヤーの間に挟まれた脚をはずしてもらうと
カラスは逃げようとしたが、1時間以上、無理に羽ばたいたり、
逆さまになっていたせいか上手く飛べない、
急降下したがなんとか羽ばたいて、地面にたたきつけられずには済んだ。
電柱からはずしたらもう管轄外ということで
東京電力の人は道路に落ちたカラスをそのままにしてさっさと退去してしまった。
なんつー神経だ。
乗用車の真後ろに落ちたカラスはこのままでは轢かれてしまうかもしれない。
そうしている間になんと車の持ち主が帰って来てしまった。
たいへんだ!轢かれちゃう!
せめて道路の端かできればビルの隙間に逃げ込んでもらえたらと
落ちたカラスを移動させに行った。

乗用車の後ろにいたカラスはやはり片足がダメになっていた。
歩くこともままならず こわごわ手を出した私から逃げようと、
道路を這うようにして 車の下に逃げ込んでしまった。
これでは更に不安だ。這いつくばって手を出す。
うーーこわいよー。
タチバサミのようなくちばしがこわい。
一瞬体に触れたと思ったら車の下から這い出てきて
そのまま道路脇のバイクや自転車が密集して止められている奥に
逃げ込んでくれた。

ここならしばらくじっとしてられる、と私は仕事に戻った。
一時間後その場所を見に行ってみたらカラスはもういなかった。
意識が回復して飛べたのだろうか。
片足はもう使えないかもしれないけど逞しいカラスのこと。
どうかがんばってほしい。

ワールドカップ開催中。
カラスは大事な日本代表のキャラクターだもんね。
手をつつかれそうで恐かったよ。と職場の人にいったら
それより仲間のカラスが何度も私の頭上をかすめるように
飛んでいて危なかったとのこと。
一瞬触れたカラスの体はとても暖かくて柔らかかった。
それと、知ってる?カラスの目は綺麗なブルーグレーなんだよ。