2003年8月

公園での野宿のはずが・・・

 

案内板の前で馬鹿でかいスーツケースを引きずって突っ立っていた私が、道に迷って途方にくれている子羊に見えたのでしょう。
見知らぬ人に声をかけられて、どっと緊張した私は、質問に対して「公園を探している」とは言えず、とっさにハリファックスの観光案内所から持ってきたB&Bのチラシをチラシを出して、そこを探していると応えたのでした。
偶然でした。「ここはうちのお隣よ!」
夫婦は喜んで、そこまで私を案内してくれるといいました。
夫婦は、今は調度観光シーズンであるらしく、宿はどこも混んでいるのではないかと心配してくれます。ご主人にスーツケースを引っ張ってもらい至れりつくせりの中、「そのようですね。」とモゴモゴ応えながら、だめもとで夫婦についていって宿をたずねてみたところ、やはり空きはないとのことでした。
「どうもありがとうございました。他を探して見ます」
彼らの家の前でその親切な夫婦にお礼をいいました。すぐあの案内板に戻って、また公園を探そうと思っていました。
奥さんのテリが言います。「あなたさえよければ、家に泊まっていって。ネェ、ティム?」
ご主人のティムも「そうだ。そうだ。泊まっていった方がいいよ。」と言います。
差し伸べられた手にはすぐしがみつく習性の私は、すぐにその申し出に飛びついてしまいました。だって断ろうにも理由が見つからなかったのです!
用意してもらった部屋は今まで泊まったことがないほど綺麗な部屋でした。ベッドも今まで寝たことがない心地よさ。ああ、野宿するはずが、最高の寝場所に恵まれてしまった。。。とても不思議な気分で、最上のベッドの上で心地よい眠りに落ちました。

夫婦の家は港からすぐの場所に建つ築100年以上たつ、文化財にも指定されている家でした。アメリカ人の彼らは昨年その家を購入して、いろいろ手直しを加えて最近やっと落ち着けるようになったそうです。夏の間はここで過ごして、冬はフロリダの別の家に住んでいるとのことでした。北米ではこんな渡り鳥のような生活を楽しむのは、経済的に余裕のある引退カップルの極一般的なスタイルでした。実際、ルーネンバーグをはじめ、ノバスコシア南岸の物件がアメリカ人の隠居後の別荘として売買され、不動産価値が日ごとにあがっているとのことでした。


名物の景色を見るには、湾を挟んだ港の反対側に行きます。
この日は曇り空でちょっと肌寒く、鮮やかな町もちょっと沈んで見えました。