2004年5月

自転車で馬を追う



昨年、一年間、放牧されてる馬の簡単な世話をしていました。
5月、青い草が伸び始める頃、馬は今まで放されていた広い放牧地から、狭い放牧地へ隔離されます。馬の中には青い草を食べ過ぎて特有の腹痛を起こしてしまう馬がいるそうです。私がいたところではそれを防ぐために、ある一定時間だけ広い牧草地へ放して、青草を食べすぎないよう管理していました。
草が伸びれば伸びるほど、その放牧時間は短くなっていきます。草が伸びきった頃で、青草の放牧地に放される時間は約2時間ほどでした。
朝一に、ゲートの前で放牧を今か今かと待ち伏せて群れている馬を外に出すのはちょっと緊張、でもとても快い作業です。その日の気分によって体一杯で喜びを表現する馬もおり、そういった馬の動きはとても美しいものでした。

そこには乗馬用に調教された馬がいなかったため、私はそこで乗馬の経験をすることはありませんでした。一日中だって青草が一杯の牧草地で草を食べていたい馬を草のない狭い放牧地に移すのは放牧時間が短くなるに連れて困難になっていきます。
全部で12頭の馬を草の少ない放牧地にどのように移すか。
自転車で追っかけます。。。。(馬だったらかっこいいのになぁ)
長い調教用の鞭で威嚇しながら追いかけるのですが、何しろ放牧地は元湿地帯のため、地面がボコボコなんです。ひどいところはマウンテンバイクといえど使い物にならず、途中乗り捨てて、脚で馬を追っていきます。徒歩で馬が追えるのか?気合です。気合にドスが入っていれば、馬は言うことを聞いてくれます。馬が一箇所に固まっているときはまだやりやすいのですが、あらゆる場所に散っているときは気合が二倍必要でした。
追い込み先の放牧地には馬をそこにとどまらせるための餌を撒いておきます。しかし、馬が広範囲に散っていて、それを全部追い込むのに手間取っていると、最初に追い込み先に追い込んでおいた馬が餌を平らげて、そこから出てきてしまうのです。出てこようとする馬を出さないように追い払いながら、まだ入りきっていない馬を入れなくてはならないのです。
一度チャンスを逃すと、私を小馬鹿にしたように途方も無く広い牧草地中を気ままに逃げ回ります。
そのとき、こちらが頭に血を上らせて、威嚇しても状況は益々悪化してしまうだけで、
適当な威嚇と、柔らかい誘導のバランスが重要でした。誘導が柔らかすぎても、馬は動かないし、あまり刺激しすぎても「そんなら言うこと聞いてやるもんか〜」と逃げてしまうのです。
とにかく一発で処理するために、毎朝、鞭をかついで、自転車にまたがったらまず気合!
というのが私の夏の毎朝の日課でした。

 


雑木林の中でのんびり溜まっているときは雑木林の中にも自転車を乗り入れます。
これ以上自転車での対応が無理で乗り捨てた場合、後からそこまで自転車を回収にもどらねばなりません。毎朝これやってたら痩せました!もう戻っちゃったけど。