2007年9月

リンゴ オブ ザ イヤー


数年前にネコの額のような庭にリンゴの木が植えられた。この木も父の他の果樹同様、毎年夏が終わる前には葉がほとんど落ちてしまう状態だった。昨年思いきった剪定をしたのが功を奏したか、それとも幹にできていた癌腫らしき瘤を切り落としたのが効いたのか、今年は葉の落ちが例年より遅かった。
また、今年の春のゴールデンウイークにリンゴの愛らしい花がたくさん咲いたときは、我が家の庭がなんだか幸福そうに見えたのだった。
花のつきがとてもよく、葉もよく持ちこたえていたので、今年はリンゴの実がいくつかなるだろうかと、家族皆が期待した。だが、合計5,6個実を結んだリンゴは、大きく育つ前に1つ消え、2つ消えて、ちゃんとしたリンゴらしい大きさまで育ったのはたった1個だった。家族の期待を背負った最後の1個は、まあるく赤く、葉の少なくなった枝に心細く実っていた。
早くとらないと、地面に落ちるか、鳥につつかれるかしてしまう。
そのままにしておけば、もっと大きくなるのではと期待しているのんきな父を説き伏せて、ついに貴重な1個を「収穫」してもらった。大きさは紅玉よりひとまわり小さかった。小さなリンゴを大切に6等分して家族3人で分け合った。
サイズは小なりであったが、味は超1級であった。
非常に強い歯ごたえの触感といっしょに、超濃密なリンゴの香りと酸味が口一杯に広がった。
「父上、傑作ではありませんか!」
私と母は父のリンゴをほめたたえた。
犬のアーニーは薄く薄く剥かれたリンゴの皮をとても美味しそうに吸い込んだのだった。