2005年10月

長鳴き鶏の恩返し

 

先日ある愛鶏家のお宅を訪ねる機会がありました。鶏命!の方でした。
私の鶏の一般像はヒヨちゃん(動物のお医者さん)のとてもアグレッシブなイメージでした。
しかし、飼い主の愛の力により、そこで育てられたニワトリたちは皆手乗り文鳥ならぬ手乗り鶏。

いろいろな種類の鶏がいる中に、声良鶏と呼ばれる15秒以上続く長い鳴き声が特徴の鶏がいました。
鶏の主人が出してきてくれた声良鶏くんは脚が歪に折れ曲がったハンディキャップを持っていました。
姿の美しくない鶏はコンテストで評価されないために、処分されるのが運命です。
全く価値のない脚の曲がったヒナを前の飼い主から買い取った主人は変わり者だと思われました。
脚が曲がって生まれてきたこのような雛には早いうちに添え木を当てれば、脚はある程度正常な形に矯正できました。現在の主人はそのまま殺されてしまう雛を引き取って曲がった脚を治してやろうと思ったのでした。しかし、既にある程度成長してしまっていたこの鶏の脚は添え木を当ててもまっすぐにはなりませんでした。
ところが、ハンディキャップを持ったその鶏は成長すると他のどの鶏よりも長く鳴くことができるようになりました。
コンテストで活躍できなかった代わりに、こどもたちに優れた長鳴きの血を引継ぎました。
そしてそれらの雛には脚が曲がった子は一羽も生まれていないそうです。
どんな生き物にも命が、感情があると信じる真の愛鳥家の精神が一羽の鶏の運命を変えたのです。
良い話だなぁと目の前で誇らしげに立つ曲がった脚の鶏を眺めながら思いました。
しかし現実は感動の結末ばかりではないのでした。
足首だけで体重をささえなければならないその鶏の寿命は長くてあと1,2年だそうです。



周りの模様はながーーーい声のイメージ
長鳴きの尻目でゼイハッって息を吸い込みます。
やっぱり長鳴きは苦しいのね。